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最適ピンホールの孔径、製作、孔径の簡便な測定方法【その1】

投稿日時 2007-10-10 23:09:00 | トピック: 講演原稿・資料

本学副会長・倉石馥(Kaoru Kuraishi)が、2007年6月3日のワークショップで講演した内容をまとめたものを2回にわたってお伝えします。

始めに
 日本におけるピンホール写真の解説が記載されている古い出版物には、ピンホール写真を「針孔写真(シンコウシャシンとルビが振ってある)」として記載されている。ここで、最近よく使われている「針穴」と「針孔」との違いは何かを検討してみた。漢和辞典などによると、「穴」という漢字の意味は、「窪み」であって、必ず底がある事が有り、「孔」という漢字の意味は「突き抜けているアナ」である。従って、「穴」は「墓穴を掘る」「落とし穴」などという使い方がある様に、窪みを意味しており、必ず底がある。従って「穴」では光が通らない。「孔」は、「絞りの孔径」「針孔」というように、貫通しているアナを意味する。そこで、写真を写すのであれば、光が通らなければならないので、「孔」であって「穴」では無いという事だ。最近は、筆者自身も書く時には「針孔写真」であって、「針穴写真」とは書かないように心がけている。

ピンホール写真の原理
 光の直進性を解明する為の実験により、ピンホール写真の原理が見つかった。時代は、BC400年頃の中国で、「墨●(ぼくてき、 Mo Ti)」(注:●は、洗濯機の「濯(タク)」の字から「さんずい(シ)」を取った漢字)という技術や戦争に対する才能を持った人が、光の直進性を証明する為に、野原に小屋を立て、その壁に小さな孔を開け、孔を通った光の行方から光の直進性を証明した。この孔を通った太陽光は室内の壁の下方に照射され、時間が経ち、太陽の位置が変わると像の位置が変化するという事に拠る。

最適な孔径とは何か?
 次に、この孔の直径はどのくらいが適切かという、本来の話に入る。
 ここで言う最適と言う意味は、もっとも鮮鋭な画像を得られる孔径という意味である。この孔が大きければ、大きいほど孔を通り抜ける光の量が多くなるので、内部の像は明るくなるが、錯乱円が大きくなり、遠くから来た光が一点に結像する事はない。孔を小さくすれば、結像した像は鮮鋭になるが、画面の明るさは暗くなる。更に孔を小さくすると、孔の中央部を通り抜けた光は直進するが、孔の縁を通った光は、その縁の影響で孔から出るときに外側へ曲がってしまう。これを「回折現象」という。
 従って、ピンホール写真を撮影するのに、最も画像がシャープになる条件としては、以下の数式で求める事が出来る。光は波であるので、その波の振幅の幅が影響する。

最適な孔径の求め方
 難しい数式の導き方は、高等な物理の理論が必要であるが、それらから得られた数式だけを要約すると

        d=√(2fλ)     d:最適な孔径
                     f:焦点距離
                     λ:撮影に使用する光の波長

ここで言う焦点距離とは、孔から感光材料までの距離

 λは使う感光材料により決めなければならない。例えば、従来からの印画紙の主要な感度は450nm程度のところにあり、マルチグレードタイプの印画紙はやや長波長まで感度が伸びており、パンクロマティックのフイルムなどは、その感度が400〜700nmくらいの幅がある。
 パンクロマティックの感光材料やカラーフイルムを使う場合には、多くの人はその波長(すなわち人間の可視光領域400〜700nmの中間の値、すなわち500〜550nmとして計算する人が多いが、700nmに近い赤色の多い被写体を撮影すると、回折現象により長波長側だけが虹のようになる事がある。そこで、筆者は最近 λ=600nmとして計算している。
 しかし、RITの教授であられた故ルドルフ・キングスレイク博士などは、それほどに神経質になる必要はないと、彼の著書「Optics in Photography」に書かれている。

ここで、簡単に計算をやってみよう。

 f=50mm、λ=600nmとすると、1nmは1x10-9m すなわち1nm=10-6mm
 従って、d=√(2fλ) の式にfとλを代入すると、求める最適な孔径dは
d=√(2x50x600x10-6 )mm=√(6x10-2)mm=√(0.06)mm=0.245mmとなる。
 これにより、孔から感光材料までの距離が50mmの時の、画面が最もシャープになる孔径は 0.245mmとなる。
※編注 斜体部はマイナス9乗などの意です。

「孔の開け方」以降は次のエントリで(10月12日掲載予定)


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